「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」。
平日の午後、ほんのひととき。
昼でも夜でもない時刻に逢瀬を重ねるふたりは、やがて深く愛し合うようになるのですが…
これほど、いつまでも苦く残っていくドラマも久しぶりです。
終盤まで誰にも感情移入できないまま、ラスト2話まできました。
一番近かったのは北野先生の目線です。ただし、北野裕一郎という人物に対してはそんなに思い入れが持てなかったので(あっなんてことを)、矛盾するようですが、かえって伝わってくるものがあったのかな、とも思います。
もちろんそれは、工さんが北野先生として纏っていた空気感であったり、素晴らしい表現力であったり、ということによるのでしょう。
一瞬の瞳の表情。
すっ、と陰のさす横顔。
ゆっくりと相手をのぞきこむ仕種。
こうと決めたらその通りに動く、愚直なまでの人間性。
北野先生は、いろいろな意味で噓のない人物でした。
同時に頑固で融通がきかなくて。そんな頑固な面が少々にが…いえ、なんでもありません💦
最終話、それぞれの身に起こったことは“当然の報い”と呼ぶにはあまりにも過酷なものでした。
リアリティありますよね。
利佳子は次女の看病のため少しだけ家にとどまりますが、加藤画伯の元へ戻ります。
「また熱が出たら、お母さん帰ってくる!」
小さなプールに飛び込むこのシーン、涙が止まらなかったです。子どもであっても、ある年齢以上であればなおのこと、自分の母に何が起こっているかは理解できるもの。
やわらかな心についた傷は、癒える日がくるのでしょうか。
隠れ家で再会するも、引き裂かれてしまう先生と紗和。
このシーンも観ていてつらいものがありましたが…二人の家族にとっては「許されないとんでもない出来事」としてしか映らない。ふたりが激しく呼び合えば呼び合うほど、家族は余計に冷静さを失い「何をやってるんだ」という心境に囚われるもの。
第三者から見ても、不貞であり裏切り行為としか見えない出来事。 渦に巻き込まれている間は、自分のことも他者のことも、判断するのはとても難しいのです。
女は夢に溺れて自分を見失う。
男は夢を現実にたぐり寄せようとして自分を見失う。
「明日が見えない恋」という夢に足をとられて。
画伯の盗作問題は、思わぬ形で明るみにでます。
そう、彼自身の手で。
彼もまた、利佳子に出会って何かが変わってしまいました。そして彼が受けた“報い”は、画家の命とも言える利き腕でした。惨いようですが、ラストには少しだけ救いがあります。
北野家と笹本家の離婚調停のシーンで交わされた会話。
先生と紗和は、互いに未練の欠片もない素振りを装います。ふたりの関係が発覚する直前にも、同じように二つの家族が集まりましたね。状況は大きく違ってしまったけれど、「噓をつく共同作業」をここでもふたりはしなければなりませんでした。
これは、北野先生の性格を考えればかなり無理をしていることになります。
自分への噓と、周囲への噓。紗和の噓や強がりもきっと見抜いただろうと思うのです。一瞬だけふたりの視線が交錯するシーンは、不貞をはたらいているのはこの人たちなのに、という意識をどこかへ追いやってしまうほど、意地らしくてもどかしい気持ちにさせられました。
放送室のシーン。
生徒たちに本当の思いを伝えたあと、北野先生がちらっと外を見ます。わかっていたんですね、紗和が近くにいることも。彼の中では、それで折り合いがついたのでしょうか。
終盤、冷静さを取り戻した妻に対しての表情。今まで見せたことのないような、温かな笑顔でした。
紗和が家に火をつけるシーンも、衝撃的でした。
普段、まあまあ静かにテレビを見る私ですが、思わず「紗和ちゃん、だめ!」と叫んでしまいました(近所迷惑)。
最後の最後、思いをこめて妻の名を呼んだ俊介。恋人時代のように。
そしてもう、立ち止まらないために。
だけど、もしも。
もしも燃え残った思いが、体の中で濾過されないままだとしたら。
紗和は、「またいつか神様を怒らせて」しまうのでしょうか。彼らの少しだけ未来の話、見てみたいです…怖いけれど。
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