命と向きあうこと。
その重さに押しつぶされず、この手に受け止める命への畏怖も忘れずにいること…
医者として、人として。
医学部長選挙、研修医と指導医、医療ミスか否か、婚約者の病状は…などなど。
よくぞここまで!と驚くほどの多くの、決して軽くはないテーマが盛り込まれていながら、複雑さをまるで感じさせず観る者をぐいぐい引っ張って行く。
作品に力がある、というのはこういうことなのかも知れない。
ところで、退職届を提出した下田先生のことを、あからさまに口には出さなくとも、一番心配していたのはほかならぬ新見先生ではなかっただろうか。
自分とどこか似ているように思っていたのかも知れないし、彼自身まだ若く、研修医時代の苦労や記憶も、きっと手の届く近さにあるはずだ。
新見先生にあまりよい印象を持てずにここまできてしまったのだが、実はこの人は繊細で傷つきやすい一面があり、それを隠すために無愛想ともとれるような態度をとっていて、誤解されることも多く、不器用な生き方をしてきたのではないか、という背景が感じとれた。
だから、下田先生のことが自分のことのように気になっていて、戻ってきた時の安堵感をぶっきらぼうにしか伝えられなくても、あの一瞬のやわらかな表情が全てを物語っていたと思う。
すずがどうなるのかは、まだわからない。
「僕と花」の歌詞を彷彿とさせる物語の展開に、そっと涙をぬぐった。
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